消化器内科は現在常勤スタッフ7名、専攻医3名で診療を行っています。スタッフは全員消化器病学会専門医を取得しており、より高度な診療を提供できるように心がけています。
当院は兵庫県肝疾患専門医療機関で東播磨地区の肝疾患診療の中心施設として、近隣の医療施設より数多くの肝疾患症例の紹介があります。肝疾患センターを設けあらゆる肝疾患に対応すべく体制を整えています。C型肝炎に対する経口の抗ウイルス療法は副作用も殆どなく短期間(8週間投与)で年齢に関係なく99%の治癒が得られるため、従来根治が困難であった70歳を超える高齢者にも積極的に投与を行っています。2021年4月現在で約650名の治療を行いほとんどの方が治癒しています。また従来適応がなかった非代償性肝硬変にも適応となり、C型肝炎のほとんどが治癒可能な時代になりました。また肝癌に対しては従来の経カテーテル的肝動脈塞栓術、経皮的肝ラジオ波焼灼療法に加え全身化学療法として経口剤、注射薬が適応となり、これらの組み合わせで予後が改善しています。抗ウイルス療法や肝癌の化学療法はその適応決定に専門性を有するため肝臓専門医の下での治療が推奨されており(6名肝臓専門医を取得)、今後も積極的に治療していく予定です。
メタボリック症候群を背景にしてNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)症例が増えてきています。糖尿病、脂質異常症、高血圧、肥満を合併している方で、脂肪肝があり軽度の肝機能異常が持続している患者さんの中に予想外に肝線維化が進行し、肝硬変や肝がんになってはじめて肝疾患の存在に気づく例が増えてきています。NASHの確診には肝生検が必須であり、生活指導も含め入院精査が必要で、このような方も積極的に精査・治療介入を行っています。また診断がつかない原因不明の肝障害(自己免疫性肝疾患など)や肝腫瘍症例も肝生検を積極的に行うことで確定診断を行い適切な治療に結びつけています。
内視鏡診断技術の発達により早期で発見される食道癌・胃癌・大腸癌が増えています。内視鏡的粘膜下層切開剥離術(ESD)は癌病巣を内視鏡的に一括切除する方法で、早期癌であれば内視鏡のみで切除、治癒できます。当院では常時NBI併用拡大内視鏡にて精密な観察・診断を行い、より早期の癌の発見に努めており適応症例には積極的にESDを行っています。
胃粘膜下腫瘍や膵腫瘍など、通常の内視鏡・CT検査のみでは確定診断困難な腫瘍に対しては内視鏡下に直接穿刺する超音波内視鏡下吸引生検を行い、従来診断困難であった症例の組織診断が可能となり治療方針決定に重要な役割を果たしています。
内視鏡センターを設立し、救急科、消化器外科、放射線科との連携を強化し、緊急疾患に対しては従来通り毎日医師・看護師の当番を決め常時消化管緊急止血術、総胆管結石による閉塞性胆管炎に対する内視鏡的緊急胆道ドレナージ術などを迅速に行える体制で臨んでいます。
手術不能消化器癌に対する化学療法も年々増えており、それぞれの癌の標準療法を基本とし、全身状態、社会的背景を考慮し症例毎に適応を決定しています。延命効果がえられないStageになれば緩和ケア内科と連携し、在宅を含め緩和ケアが円滑に行えるようにしています。
病棟消化器症例カンファレンス、内視鏡カンファレンス、外科内科術前カンファレンスは毎週、手術症例・内視鏡切除例・肝生検症例、剖検症例の臨床病理カンファレンスをそれぞれ月1回行い、診療レベルの向上、均一化、若手医師の教育指導を行っています。
また消化器関連の主な学会に積極的に参加・発表を行っており、各学会の指導施設に認定されています。