宗教的輸血拒否を表明する患者の診療に就いた場合、担当医は所属診療科責任者(主任医長)に速やかに連絡するとともに、当該患者より免責証明書が提出され絶対的無輸血治療の申し出があっても、それには応じられない旨を伝える。また、免責証明書への署名を求められても、署名は行わない。
輸血療法に関する十分なインフォームド・コンセントにもかかわらず相対的無輸血治療の方針に同意が得られない場合は、速やかに転院を勧める。
相対的無輸血治療の同意が得られている場合でも、やむを得ず輸血療法を行う際は、所属診療科責任者を含む上級医複数名で輸血以外の治療法の模索と輸血治療の是非を決定する。さらに症例の詳細な経過を医療安全対策担当部長に報告する。
手術同意書、輸血同意書には、相対的無輸血治療の方針を明記し、院長はじめ副院長、診療部長、医療安全対策担当部長および担当医名を列記して本方針が病院としての方針であることを明確にする。このため、宗教的輸血拒否患者に対する手術同意書、輸血同意書は、通常用いている同意書とは異なる様式となる。それらは、必要時直ちに使用できるよう電子カルテ内に雛形を保存する。
出血性ショック状態で救急搬送された場合、入院中の病状急変により輸血治療が必須と判断され、かつ、時間的余裕がない場合には、相対的無輸血治療の方針のもと輸血治療を行う。すなわち、時間の許す限り患者及び家族に輸血の必要性を説明し同意を求めるが、患者本人および代諾者(家族)より相対的無輸血治療の同意が得られない場合には (手術同意書、輸血同意書に同意が得られない場合も含む)、生命の尊重を第一義に考え救命を優先した相対的無輸血治療を行う。その際、家族や教団関係者などより物理的抵抗があった場合は、適宜対応する。
患者本人および代諾者への輸血療法に関する説明と同意を得るにあたっては、担当医のみならず当該診療科の上級医など複数名の医師が同席して対応することを原則とする。